## リストの政治経済学の国民的体系が扱う社会問題
### 1.
国民経済の発展段階の差異と国際分業の問題
リストは、当時のイギリス古典派経済学が唱える自由貿易論を批判し、国家間の経済発展段階の差異を重視しました。古典派経済学は、すべての国が同じ発展段階にあることを前提として、自由貿易がすべての国にとって利益をもたらすと主張していました。しかし、リストは、現実には国によって経済発展段階が異なり、工業が未発達な農業国が自由貿易を行うと、先進工業国に市場を席巻され、自国の工業発展の機会が奪われてしまうと主張しました。
リストは、このような状況下では、保護貿易によって自国の工業を育成し、経済発展段階を先進国に追いつかせる必要があると考えました。そして、国内産業が十分に成長し、国際競争力を備えた段階で自由貿易に移行すべきだとしました。これは「幼稚産業保護論」と呼ばれ、後進国における経済発展戦略として大きな影響を与えました。
### 2.
国民の精神的・道徳的統一の欠如と経済発展の関係
リストは、経済発展には物質的な資本だけでなく、国民の精神的・道徳的な統一も重要であると考えました。彼は、国民が共通の言語、歴史、文化を共有し、国家への帰属意識を高めることが、経済発展の基盤となると考えました。
リストは、当時のドイツが多数の小国家に分裂し、経済的にも政治的にも統一されていない状況を批判しました。彼は、ドイツが真に経済発展を遂げるためには、国家統一を果たし、国民経済を統合する必要があると主張しました。
### 3.
生産力と生産手段の不均衡
リストは、一国の経済発展には、生産力と生産手段のバランスが重要であると考えました。生産力とは、労働力や技術力など、生産活動を行う能力のことです。一方、生産手段とは、工場や機械、道路などの生産活動に必要な設備や資源のことです。
リストは、当時のドイツが豊富な労働力や資源を有しているにも関わらず、工場や機械などの生産手段が不足しているため、経済発展が阻害されていると指摘しました。彼は、国家が積極的に関与し、鉄道や道路などの社会資本の整備や、工業化を促進するための政策を実施することで、生産力と生産手段のバランスを図る必要があると考えました。
### 4.
国家の役割と介入の必要性
リストは、自由放任主義的な経済政策を批判し、国家が経済活動に積極的に介入する必要性を主張しました。彼は、国家が保護貿易や産業政策を通じて国内産業を育成し、経済発展を促進する役割を担うべきだと考えました。
リストは、国家の役割は単なる「夜の番人」ではなく、「国民経済の保護者」であるとしました。彼は、国家が国民経済全体の発展のために、長期的な視点に立って政策を実施する必要があると主張しました。