## リカードの経済学および課税の原理の位置づけ
古典派経済学の金字塔
デヴィッド・リカードの主著『経済学および課税の原理』(1817年)は、アダム・スミスの『国富論』(1776年)を継承し、発展させた古典派経済学の金字塔と位置付けられます。同書は、労働価値説に基づいた価値論、地代論、分配論を展開し、自由貿易の利益を論証しました。
労働価値説の体系化
リカードは、商品の価値はそれを生産するために必要な労働量によって決まるとする労働価値説を体系化しました。スミスも労働価値説を唱えていましたが、リカードはそれをより厳密に定義し、分析しました。彼は、商品の価格が市場において需要と供給によって変動することを認めつつも、その中心的な決定要因は生産に必要な労働量であると主張しました。
地代論の展開と穀物法批判
リカードは、地代の発生メカニズムを解明するために、差額地代論を展開しました。肥沃度の異なる土地が存在する場合、より肥沃な土地からはより多くの収穫が得られます。この収穫の差が地代を生み出すとリカードは説明しました。この地代論は、当時のイギリスで論争の的となっていた穀物法批判の根拠となりました。穀物法は穀物価格を維持するために輸入を制限する法律でしたが、リカードはこれが地主の利益のために労働者や資本家の負担を増大させると主張したのです。
分配論と経済成長の限界
リカードは、生産された富が地代、賃金、利潤に分配されると考えました。彼は、経済が発展するにつれて地代が増大し、利潤が減少すると主張しました。この「利潤率逓減の法則」は、経済成長には限界があると示唆するものであり、後のマルサスの「人口論」やミルによる定常状態の議論にも影響を与えました。
比較生産費説と自由貿易の擁護
リカードは、国際貿易においても労働価値説に基づいた比較生産費説を唱えました。これは、各国がそれぞれ最も生産性の高い財を専門的に生産し、貿易を行うことで、すべての国が利益を得られるというものです。彼はこの理論を用いて、自由貿易の利益を力強く主張しました。
その後の経済学への影響
『経済学および課税の原理』は、出版当時から大きな反響を呼び、19世紀前半のイギリス経済学に決定的な影響を与えました。同書は、リカードの弟子たちによって広く読まれ、古典派経済学の標準的なテキストとなりました。また、マルクス経済学の形成にも大きな影響を与えました。
リカードの理論は、現代経済学の視点からは批判される点も少なくありません。しかしながら、その論理の明快さと社会問題に対する鋭い洞察は、今日でも多くの経済学者に影響を与え続けています。
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