リカードの経済学および課税の原理が扱う社会問題
リカードの時代背景
デヴィッド・リカードが1817年に「経済学および課税の原理」を著した時代は、イギリスが産業革命の真っ只中にあった時代と重なります。この革命は、経済成長と技術進歩をもたらす一方で、深刻な社会問題も引き起こしました。
人口増加と貧困
産業革命に伴い、イギリスの人口は急増しました。しかし、雇用の創出が人口増加に追いつかず、多くの労働者が貧困に苦しんでいました。リカードは、この問題の原因を分析し、解決策を探りました。
穀物法と地代の分配
当時のイギリスでは、穀物法によって外国産の穀物の輸入が制限されていました。地主たちは高価格で穀物を販売できるため、この法律を支持していました。しかし、リカードは、穀物法が穀物の価格を人為的につり上げ、労働者階級の生活を圧迫していると批判しました。
リカードは、地代が土地の生産性と密接に関係していることを明らかにしました。彼は、人口増加と食料需要の増大に伴い、より多くの土地が耕作されるようになると主張しました。しかし、土地の質には限りがあるため、耕作地が拡大するにつれて、生産性の低い土地も利用されることになります。その結果、地代は上昇し、資本家や労働者の取り分が減少するとリカードは考えました。
経済成長と分配のジレンマ
リカードは、経済成長と分配のジレンマについても考察しました。彼は、経済成長は資本蓄積によって促進されると考えましたが、地代の上昇が資本蓄積を阻害する可能性があると指摘しました。
リカードは、地代の上昇が資本家の利益を圧迫し、投資意欲を低下させると考えました。その結果、経済成長が鈍化し、労働者の賃金も低下する可能性があると彼は指摘しました。
国際貿易と比較優位
リカードは、自由貿易の強力な支持者でした。彼は、各国が自国にとって最も効率的に生産できる商品に特化し、貿易を行うことで、すべての国が利益を得られると主張しました。これが、リカードの比較優位の原理として知られています。
リカードは、国際貿易によって生産の効率性が高まり、世界全体の富が増加すると考えました。また、自由貿易は、穀物法のような保護貿易政策によって引き起こされる国内の価格上昇を抑える効果もあると彼は主張しました。