ラートブルフの法哲学を読んだ後に読むべき本
法の概念
ハンス・ケルゼン著
ラートブルフの法哲学を読んだ後、次に読むべき本としてケルゼンの『法の概念』を挙げます。ラートブルフとケルゼンは、20世紀の法哲学、特に法実証主義の分野において、最も影響力のある二人の思想家です。しかし、両者の法に対する考え方には、根本的な違いがあります。ラートブルフの思想をより深く理解するためには、彼と対照的なケルゼンの議論を検討することが不可欠です。
ラートブルフは、ナチス政権の経験を経て、法の基礎は、単なる形式的な妥当性や有効性ではなく、正義や道徳にあると確信するに至りました。彼は、著『法の不法と超法的な法』において、「法は正義を包含しなければならない」と主張し、不正義な法律は真の法ではないと断言しています。
一方、ケルゼンは、法と道徳を明確に区別する「純粋法学」を提唱しました。彼は、法の妥当性は、それが上位の法的規範に由来するという形式的な手続きによってのみ保証されると考えました。道徳や正義は、法の妥当性とは無関係であり、法的議論の対象外であると主張したのです。
『法の概念』は、ケルゼンの法理論の核心をなす著作です。彼は本書において、法を「強制規範の体系」として定義し、その妥当性の根拠を「基本規範」という仮説に求めました。基本規範は、法秩序の最高規範であり、それ自体には内容がなく、単に「法秩序は有効である」という事実を前提としています。
ラートブルフの法哲学を読んだ後、ケルゼンの『法の概念』を読むことで、両者の思想の対比が明確になり、法と道徳、正義、法の妥当性といった問題について、より深い考察を深めることができるでしょう。ケルゼンの形式的な法理論は、ラートブルフの主張する法の倫理的な側面を際立たせ、両者の対話を通して、現代社会における法の役割について、多角的な視点を獲得することができます。