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ラートブルフの法哲学の関連著作

ラートブルフの法哲学の関連著作

**1. 法の概念** – ハンス・ケルゼン

ケルゼンは、ラートブルフと同様に、法実証主義の代表的な法学者の一人として知られています。彼の主著である「法の概念」は、純粋法学の立場から、法をいかなる道徳や正義といった理念からも切り離し、客観的に捉えようとした著作です。ケルゼンは、法を強制秩序としての側面から捉え、「もし~ならば、~でなければならない」という法規範の構造を明らかにしました。

ラートブルフは、ナチス政権下における法の空洞化という経験から、法実証主義の限界を痛感し、法の概念に超法的な要素を取り入れる必要性を主張しました。ケルゼンは、ラートブルフの批判に対し、法と道徳を峻別することで法の自律性を確保できると反論し、両者の間で激しい論争が交わされました。

**2. 法の正義** – グスタフ・ラートブルフ

ラートブルフ自身の著作であり、彼の法哲学の中心をなすものです。本書の中でラートブルフは、ナチス政権下で生じた法の矛盾と葛藤を分析し、法実証主義の限界を克服するために、法の概念に「正義」という要素を取り入れる必要性を説きました。

ラートブルフによれば、法は、(1)法の確実性、(2)法の目的適合性、(3)法の正義、という三つの価値を追求すべきであり、これらの価値は相互に補完し合う関係にあります。しかし、ナチス政権下では、法の確実性を過度に重視した結果、正義や人権が蹂躙される事態が発生しました。この経験から、ラートブルフは、法の確実性が他の二つの価値と抵触する場合には、正義が最上位の価値として優先されるべきだと主張しました。

**3. 法と国家** – レオン・デュギー

デュギーは、フランスの公法学者であり、社会連帯論を唱えたことで知られています。彼は、個人主義的な法思想を批判し、社会の構成員としての個人の義務と責任を強調しました。デュギーによれば、法は、個人間の自由な契約によって成立するものではなく、社会全体の利益を実現するために存在するものです。

ラートブルフは、デュギーの社会連帯論に共感しつつも、それが国家による個人の自由の抑圧につながる可能性を危惧していました。ラートブルフは、法の正義を実現するためには、個人と社会の調和が不可欠であると主張しました。

**4. 実定法と道徳との関係** – ハーバート・ハート

ハートは、20世紀を代表する法哲学者の一人であり、現代法実証主義の基礎を築いた人物として知られています。彼は、ケルゼンが提唱した純粋法学を批判的に継承し、より洗練された法実証主義の理論を展開しました。

ハートは、「法の概念」において、法を「承認の規則」と「義務の規則」からなる体系として捉え、法と道徳の概念的な区別を明確にしました。彼は、法と道徳は異なる概念であり、法の有効性は道徳的な内容とは無関係に成立すると主張しました。

ラートブルフの法哲学は、ハートの法実証主義に対する批判と捉えることもできます。ラートブルフは、法の概念に正義という道徳的な要素を取り入れることによって、ナチス政権下で生じたような法の空洞化を防ぐことができると考えました。

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