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ラートブルフの法哲学の評価

ラートブルフの法哲学の評価

ラートブルフの法哲学における核心概念

グスタフ・ラートブルフ(1878-1949)は、20世紀のドイツを代表する法哲学者の一人です。彼の法哲学は、法実証主義に対する批判として生まれ、法の概念に道徳的な要素を積極的に導入しようとした点に特徴があります。

ナチス政権経験と「法の三類型」

ラートブルフの法哲学を語る上で欠かせないのが、ナチス政権の台頭とそれに対する彼の思想的な苦悩です。彼はワイマール共和国時代、法実証主義的な立場から、法の妥当性をその制定手続きの正当性にのみ見出す立場をとっていました。しかし、ナチス政権が合法的な手続きを経て制定した法律が、明らかにユダヤ人に対する迫害など、正義に反するものであったという経験を通して、ラートブルフは従来の法実証主義に疑問を抱くようになります。

この経験を踏まえ、ラートブルフは「法の三類型」という概念を提唱します。それは、①法の内容ではなく、その制定過程のみに着目する「法実証主義」、②法の効力はその内容が何らかの正義や道徳と一致する場合にのみ認められるとする「自然法論」、そして③法は原則として実定法に従うものの、その内容が「耐えがたい不正」を含む場合には、法としての妥当性を失うとする「法を超えた法」の三つです。

「相対主義」の批判とラートブルフの弁明

ラートブルフの法哲学、特に「法を超えた法」の概念は、法の安定性を脅かし、恣意的な判断を招きかねないという批判に晒されてきました。法の妥当性の判断が、個人の主観的な正義観に委ねられることになれば、法の予測可能性は損なわれ、法秩序は不安定なものになるという懸念です。

ラートブルフ自身もこうした批判を意識しており、「法を超えた法」はあくまで最終的な手段として位置づけられるべきだと主張しています。彼は、法の安定性を重視する立場と、正義を実現しようとする立場との間には、常に緊張関係が存在することを認めつつも、「耐えがたい不正」を前にしたときには、法の形式的な妥当性よりも、実質的な正義を優先すべきだと考えました。

現代社会におけるラートブルフ法哲学の意義

現代社会においても、法と道徳の関係は重要なテーマであり続けています。特に、グローバリゼーションの進展や新たな技術の登場によって、従来の法秩序では対応しきれない問題が生じてきており、法のあり方が改めて問われています。

ラートブルフの法哲学は、法が単なる技術的な問題ではなく、人間の尊厳と正義の実現という根本的な問題と深く関わっていることを改めて私たちに気づかせてくれます。彼の思想は、現代社会における法のあり方を考える上で、重要な視点を提供してくれると言えるでしょう。

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