ラ・ロシュフーコーの箴言録の技法
箴言という形式
ラ・ロシュフーコーの『箴言録』は、その名の通り、多数の短い箴言によって構成されています。箴言とは、一般的に人生や社会に対する教訓や風刺などを簡潔に表現した言葉です。ラ・ロシュフーコーは、この伝統的な形式を用いることで、人間の行動原理や社会の真実を鋭く、そして時に痛烈に描き出しています。
逆説的な表現
ラ・ロシュフーコーは、箴言の中で逆説的な表現を多用することで、読者に思考の転換を迫ります。一見矛盾しているように見える言葉の裏側に、人間の複雑な心理や社会の意外な側面を浮き彫りにする効果を狙っているのです。
簡潔で明瞭な文体
『箴言録』の特徴の一つに、その簡潔で明瞭な文体があげられます。ラ・ロシュフーコーは、無駄な言葉を一切省き、最小限の言葉で最大の効果を狙うかのような鋭い文章を書きます。そのため、彼の言葉は読者の心に深く突き刺さり、強い印象を残します。
自己愛への言及
ラ・ロシュフーコーは、人間行動の根底には「自己愛」があると捉えています。彼の箴言の多くは、一見、高潔に見えたり、美しいとされる人間の行動の裏に潜む自己愛を暴き出すかのような内容です。
一般化と断定
ラ・ロシュフーコーの箴言は、「すべての人間は…である」といったように、一般化と断定を特徴としています。もちろん、現実には例外も存在するものの、彼はあえて断定的な表現を用いることによって、人間の普遍的な本質に迫ろうとしたと言えるでしょう。