## ラ・ロシュフーコーの箴言録と作者
フランソワ・ド・ラ・ロシュフーコーについて
フランソワ・ド・ラ・ロシュフーコー（François de La Rochefoucauld、1613-1680）は、フランスの貴族、文筆家、モラリストです。彼は激動の時代である17世紀フランスを生きた人物であり、フロンドの乱と呼ばれる内乱にも参加しました。この経験から、人間の本質や社会の矛盾に対する鋭い洞察を得たと考えられています。
箴言録について
ラ・ロシュフーコーは、自身の経験や観察に基づいた人間観察を短い警句形式でまとめた「箴言録」（Maximes）を執筆しました。この作品は、人間の行動の背後に潜む利己心や虚栄心、自己愛などを鋭く指摘しており、フランス文学におけるモラリスト文学の傑作とされています。
箴言録は、1665年に初めて刊行されましたが、ラ・ロシュフーコーはその後も改訂を繰り返し、最終的に1678年に第5版が出版されました。この版には、504の箴言が含まれています。
箴言録の内容と特徴
箴言録は、人間の心の奥底にある真実を、簡潔で洗練された文体で表現しています。その内容は、主に次のようなテーマに分類できます。
* **自己愛**: ラ・ロシュフーコーは、人間のほとんどの行動が、 ultimately 自己愛に基づいていると考えました。彼は、自己愛を巧妙に隠しながら、他人に良い印象を与えようとする人間の姿を鋭く描いています。
* **虚栄心**: 他人からの承認や賞賛を求める虚栄心も、箴言録で繰り返し登場するテーマです。ラ・ロシュフーコーは、虚栄心が人間関係を複雑にし、真の友情を阻む要因であると指摘しています。
* **利己心**: 人間の行動の原動力となるのは、突き詰めれば利己心であるという考え方が、箴言録全体を貫いています。彼は、一見、高潔に見える行為でさえ、その裏には利己的な動機が隠されていることが多いと喝破しています。
箴言録の影響
箴言録は、フランス文学だけでなく、ヨーロッパの思想史にも大きな影響を与えました。パスカル、ラ・ブリュイエール、ヴォルテール、ニーチェなど、多くの思想家や作家が、箴言録からインスピレーションを受けたとされています。現代においても、人間の心の複雑さを鋭く描いた作品として、箴言録は読み継がれています。