## ラ・メトリの人間機械論を面白く読む方法
1. 時代の寵児、異端の医師に触れる
18世紀フランス、啓蒙主義の光と影が織りなす中で、ひとりの医師が挑発的な書物を世に放ちました。『人間機械論』。著者は、ジュール・オフレ・ド・ラ・メトリ。医学の道を歩みながら、既存の権威や常識にとらわれない大胆な思想で物議を醸した人物です。
ラ・メトリは、当時の学問の中心地パリで医師として活躍する傍ら、哲学、自然科学にも深い関心を持ち、精力的に研究に励んでいました。しかし、その革新的な思想は、伝統的な価値観を重んじる人々にとっては脅威と映り、激しい非難を浴びることになります。
2. 禁書とされた衝撃の内容に触れる
『人間機械論』は、人間を複雑な機械と見なす、唯物論的な思想を展開した書物です。当時、人間の精神や魂は神聖不可侵な領域と考えられており、ラ・メトリの主張は、神への冒涜、社会秩序を揺るがす危険思想とみなされました。
彼は、人間の思考、感情、意識といった精神活動さえも、物質的な身体のメカニズムによって説明できると主張しました。心拍や消化といった生理現象と同じように、精神活動もまた、脳や神経といった器官の物理的な働きによって生み出されると考えたのです。
3. ラ・メトリの論理の組み立てを追体験する
ラ・メトリは、自説を裏付けるために、医学、生物学、物理学といった当時の最先端の知識を駆使し、緻密な論理を組み立てています。動物実験の結果や、人間の解剖学的知見、さらには自動人形（オートマタ）の技術的進歩を引き合いに出しながら、人間を機械と見なすことの妥当性を、読者に訴えかけます。
特に、動物と人間の比較を通して、人間の精神活動の源を肉体に求める論法は、当時の常識を覆すものでした。動物の行動が、本能や学習によって説明できるのと同様に、人間の複雑な行動も、脳という精巧な器官の働きによって説明できると彼は考えたのです。
4. 当時の社会背景を想像しながら読む
『人間機械論』は、単なる医学書や哲学書ではなく、当時の社会に対する痛烈な批判も込められた書物です。宗教的な権威が絶対的な力を持っていた時代に、人間を機械と断言することは、神の存在を否定し、人間の尊厳を冒涜する行為とみなされました。
ラ・メトリは、人間を機械と見なすことで、人間を神の手から解放し、自由で平等な社会を実現しようとしたのかもしれません。彼の思想は、現代の私たちにとっても、人間とは何か、生命とは何か、といった根源的な問いを投げかけ、深い思考へと誘ってくれます。