ラ・メトリの人間機械論を読んだ後に読むべき本
ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリの人間機械論を読んだ後に読むべき本:
フランツ・ブレンターノ『心理学より見たる経験主義と超越論的観念論』
ラ・メトリの『人間機械論』は、人間の精神を含むすべての生命現象を純粋に機械的な原理によって説明できると主張し、大きな論争を巻き起こしました。この唯物論的な思想は、当時の伝統的な哲学や宗教観を揺るがすものであり、その影響は現代の神経科学や人工知能の分野にまで及んでいます。
ラ・メトリの主張をより深く理解するためには、彼の思想が生まれた18世紀の哲学的背景、特にデカルトの心身二元論を理解することが重要です。デカルトは、心と体は別々の実体であり、相互作用すると考えました。一方、ラ・メトリは、この二元論を否定し、心は脳の活動に還元できると主張しました。
しかし、ラ・メトリの思想は、心身問題に対する決定的な答えを提供するものではありません。心の本質、意識の起源、自由意志の問題など、多くの哲学的な課題が残されています。
そこで、ラ・メトリの『人間機械論』を読んだ後には、フランツ・ブレンターノの『心理学より見たる経験主義と超越論的観念論』を読むことをお勧めします。ブレンターノは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した哲学者、心理学者であり、意識の哲学に大きな影響を与えた人物です。
ブレンターノは、著書『心理学より見たる経験主義と超越論的観念論』の中で、意識の働きを「志向性」という概念を用いて説明しようとしました。志向性とは、意識が常に何かに「向かっている」、つまり対象を持っているという性質のことです。
ブレンターノは、意識のこの志向性という特徴こそが、物質的な機械とは異なる人間の心の本質であると主張しました。彼は、デカルトの心身二元論を批判的に継承しつつも、経験主義と超越論的観念論の両方の立場を検討し、独自の意識の哲学を展開しました。
ラ・メトリの機械論的な人間理解と、ブレンターノの志向性を重視した心の哲学は、一見対照的な見解のように思えるかもしれません。しかし、両者の著作を比較検討することで、心身問題の複雑さ、人間の意識の奥深さをより深く理解することができます。
ブレンターノの思想は、その後、現象学のエトムント・フッサール、実存主義のマルティン・ハイデッガー、分析哲学の初期の思想家たちなど、20世紀の哲学に多大な影響を与えました。彼の著作を読むことで、現代の心の哲学、認知科学、人工知能研究における議論の原点を探ることができます。