## ラ・メトリの人間機械論の批評
###
還元主義への批判
ラ・メトリの主張は、人間の精神活動を含めたあらゆる現象を物質の運動に還元しようとする機械論的唯物論に基づいています。しかし、人間の意識や感情、思考といった高度な精神活動を、単純な物理的なメカニズムに還元できるのかという批判があります。意識のクオリア（質感）や主観的な経験といったものは、物質の運動だけでは説明できないという反論も存在します。
###
倫理的な問題点
人間を機械とみなすことは、人間の尊厳や道徳性を否定することにつながるという批判もあります。もし人間が自由意志を持たない単なる機械だとすれば、責任や道徳といった概念も成り立たなくなってしまいます。ラ・メトリは、人間機械論はむしろ人間の幸福に貢献すると主張しましたが、倫理的な観点からの懸念は根強く残っています。
###
科学的根拠の不足
ラ・メトリは、当時の医学や生理学の知見を根拠に人間機械論を展開しましたが、現代の科学的視点から見ると、その根拠は十分とは言えません。18世紀においては、脳の機能や神経系の働きについての理解は未発達であり、ラ・メトリの主張は、現代の神経科学や認知科学の知見に照らし合わせると、多くの修正を迫られることになります。