## ラ・メトリの人間機械論の力
「人間機械論」の概要
ラ・メトリの主著『人間機械論』 (L’homme machine, 1748年) は、人間の精神を含むすべての活動が物質的な機械の働きに還元できると主張する、機械論的唯物論の立場をとります。これは、当時のヨーロッパ思想界を支配していたデカルトの心身二元論(精神と身体を別々の実体とみなす考え方)を真っ向から否定するものでした。
医学的知見に基づく人間理解
ラ・メトリは医師としての経験から、人間の身体が複雑な機械のように機能していることを観察し、その延長線上に精神活動も位置づけられると考えたのです。彼は、人間の思考、感情、感覚はすべて、脳や神経といった物質的な器官の運動によって説明できると主張しました。
当時の社会への衝撃
『人間機械論』は、その過激な内容から出版当時大きな波紋を呼び、発禁処分を受けました。しかし、この著作は、人間を物質的な存在として捉えることで、それまでの宗教的な人間観に大きな転換をもたらしました。
唯物論・無神論の台頭を促す
ラ・メトリの思想は、その後の唯物論や無神論の発展に大きな影響を与えました。彼の著作は、18世紀フランス啓蒙思想の重要な一角を占め、人間を自然の一部として捉える現代科学の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。