## ランブレヒトのドイツ史から学ぶ時代性
###
ランブレヒトと「ドイツ史」
セバスチャン・ハフナーの代表作として知られる『Geschichte Deutschlands』（ドイツ史）は、日本語では『ランブレヒトのドイツ史』と題され親しまれています。これは、ハフナーがこの著作を、当時ナチス政権下でユダヤ人として迫害を受けていた友人の弁護士ヨーゼフ・カスパール・ランブレヒトの名前で発表したことに由来します。
###
ワイマール期からナチス台頭、そして亡命
ハフナーは、第一次世界大戦後の激動の時代であったワイマール共和国期に法学を学び、ジャーナリストとして活動していました。しかし、ナチスが台頭しユダヤ人への迫害が強まる中、1938年にイギリスへ亡命します。
###
亡命先での「ドイツ史」執筆
亡命先のイギリスでハフナーは、ナチス政権下にある祖国ドイツの現状を憂い、ドイツの人々、特に若者に向けて自国の歴史を客観的に見つめ直すことの必要性を痛感します。 そして、友人のランブレヒトの名を借りて発表したのが『ランブレヒトのドイツ史』です。
###
「歴史認識」の必要性
ハフナーは、ナチス政権による支配、そして戦争という悲劇を生み出したのは、ドイツ国民自身に他国への侵略や優越意識を植え付ける歪んだ歴史観が存在したためだと考えていました。
###
「ドイツらしさ」への批判的考察
本書では、ドイツ統一を成し遂げた「鉄血宰相」ビスマルクの功績を評価する一方で、その強権的な政治手法がその後のドイツの政治体制に影を落としていることを指摘します。また、第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約による過酷な賠償義務を批判的に捉えながらも、それがドイツ国民のナチス支持を招いたとする見方には異を唱えています。
###
「個人」の視点
ハフナーは、本書を執筆するにあたり、従来の歴史書のように客観的な事実の羅列ではなく、あくまでも「個人」であるハフナー自身の視点から見た歴史として描いています。 これは、読者一人ひとりに歴史と向き合い、自ら考えることの重要性を訴えかけるためでした。
###
時代を超えて
『ランブレヒトのドイツ史』は、ナチス政権崩壊後、ハフナー自身の名で再版され、ドイツ国内でも広く読まれるようになりました。
ハフナーは、自らの亡命という経験を通して、国家や民族といった枠組みを超え、個人としてどのように生きるべきかを問い続けました。
彼の思想は、現代社会においても重要な意味を持ち続けています。