ランケの世界史の価値
近代歴史学の出発点
レオポルト・フォン・ランケ(1795-1886)は、近代歴史学の父と称されるドイツの歴史家です。彼の主著『世界史』(Geschichte der Welt)は、1880年から刊行が始まり、ランケの死後も弟子たちによって編纂が続けられ、最終的に全16巻の大著となりました。
史料批判に基づく実証主義
ランケは、歴史研究において、主観的な解釈や推測を排斥し、客観的な史料に基づいて事実をありのままに記述することを重視しました。彼の有名な言葉「ただ、それが実際に起こったことを示したい」 (wie es eigentlich gewesen) は、彼の歴史観をよく表しています。
ランケは、史料批判の方法を体系化し、一次史料の重要性を強調しました。一次史料とは、事件や出来事を実際に体験した人によって、その当時もしくは直後に記録された史料のことです。彼は、一次史料を批判的に吟味し、その信頼性を検証することで、過去の事実を正確に復元できると考えました。
政治史を中心とした叙述
『世界史』は、政治史を中心とした叙述が展開されています。ランケは、国家を歴史の主体と捉え、政治や外交、戦争といった国家間の関係を重視しました。彼は、個人の役割や社会経済的な要因についても一定の認識を示していましたが、あくまでも政治史の枠組みの中で論じられるものでした。
19世紀ヨーロッパにおける影響
ランケの歴史観は、19世紀ヨーロッパの歴史学に大きな影響を与え、多くの歴史家が彼の方法論を継承しました。彼の著作は、歴史学の古典として、今日でも読み継がれています。