## ラブロックのガイアの発想
ガイア仮説とは
ジェームズ・ラブロックによって提唱されたガイア仮説は、地球とそこに存在する生命をひとつの巨大な自己調節システムと捉える仮説です。 1960年代後半に提唱された当初は、地球全体の気温や大気組成といった地球環境が、生命活動の影響を受けて一定の範囲内に保たれているとする、斬新なアイデアでした。
ラブロックの着想
ラブロックは、NASAの火星探査計画に参加していた際に、地球と火星の大気の組成の違いに着目しました。 火星の大気が化学的に不活性な状態であるのに対し、地球の大気は酸素やメタンなど、生物活動によって生成・消費される気体が豊富に存在しています。この違いから、地球の生命が地球環境に影響を与えている可能性を考え始めました。
ガイア仮説の根拠
ガイア仮説を支持する証拠として、以下のようなものが挙げられます。
* **地球の気温の安定性:** 地球の気温は、太陽の活動が変化してきたにもかかわらず、数十億年以上にわたって生命が存在できる範囲に保たれてきました。
* **大気組成の恒常性:** 地球の大気中の酸素濃度は約21％で安定しており、これは生物の光合成活動と呼吸活動のバランスによって維持されています。
* **海洋の塩分濃度の安定性:** 海水の塩分濃度は約3.5％でほぼ一定に保たれており、これは岩石の風化や生物活動によって調節されていると考えられています。
ガイア仮説への批判
ガイア仮説は、その斬新さゆえに多くの批判も受けてきました。主な批判として、以下のようなものが挙げられます。
* **科学的な厳密さに欠ける:** ガイア仮説は、定量的なモデルや実験による検証が不足しており、科学的な仮説としての厳密さに欠けるとの批判があります。
* **目的論的な解釈:** ガイア仮説は、地球全体が生命にとって都合の良いように調節されているという、目的論的な解釈に陥っているとの批判があります。
* **生物の利他的性を前提としている:** ガイア仮説は、生物が地球環境を安定化させるために利他的に作用することを前提としていますが、進化論的な観点からは疑問視する声もあります。
ガイア仮説のその後の展開
ガイア仮説は、当初は多くの批判を受けましたが、その後の研究によって、地球システムの複雑な相互作用が明らかになるにつれて、再評価されるようになりました。現在では、地球システム科学という学問分野が確立され、地球全体の物質循環やエネルギーフロー、生物活動と地球環境の相互作用などが研究されています。