## ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』の思想的背景
ルネサンスの影響
ラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』は、16世紀フランスにおけるルネサンスの影響を色濃く反映した作品です。
ルネサンス期には、中世的な権威主義やスコラ哲学への反発から、古代ギリシャ・ローマの文化が見直され、人間性の解放、理性や経験に基づいた知識の探求が重視されました。
人文主義との関連
ラブレー自身も人文主義者であり、古典文学に造詣が深く、ギリシャ語やラテン語に精通していました。
作品中には、古典からの引用やパロディが頻繁に登場し、古代の思想や文化に対する深い理解がうかがえます。
また、人間中心主義的な世界観に基づき、人間の可能性や自由を肯定的に捉え、宗教的な教条主義や社会の抑圧から解放され、理性と自然に従って生きることを理想としています。
宗教改革の影響
16世紀初頭には、ルターによって開始された宗教改革の波がフランスにも押し寄せ、カトリック教会の権威は失墜しつつありました。ラブレー自身も、教会の腐敗や堕落を批判しており、作品中では、聖職者や修道士を風刺的に描いています。
しかし、ラブレーは宗教そのものを否定していたわけではなく、キリスト教の福音主義に共感する部分もありました。
これらの思想的背景を踏まえ、『ガルガンチュアとパンタグリュエル』は、単なる滑稽な物語ではなく、ルネサンス期の人文主義や宗教改革の精神を反映した、深遠な思想を含んだ作品として評価されています。