## ラッセルの幸福論の普遍性
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時代背景
ラッセルの『幸福論』は1930年に出版されました。第一次世界大戦後の不安定な時代であり、世界恐慌の始まりとも重なります。人々は経済的な苦境だけでなく、西洋文明の崩壊といった将来への不安を抱えていました。
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幸福の定義
ラッセルは本書で、幸福を「ある種の感情の要素を含む、意識に快い状態」と定義しています。彼は、幸福は客観的な条件よりも、むしろ主観的な心の状態であることを強調しています。
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普遍性を主張する根拠
ラッセルは、幸福は時代や文化を超えて人間にとって普遍的な欲求であると主張します。彼は、幸福を追求することは生物としての本能に根ざしており、人間の本性に深く関わっていると説明しています。
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幸福への道筋
ラッセルは、幸福を阻害する要因として、自己中心的思考や競争心、倦怠感、嫉妬などを挙げます。そして、幸福を獲得するための方法として、「外的事物への執着を減らす」「愛情や家族、仕事、趣味など、人生における興味の対象を広げる」「広い視野を持つ」といった具体的な方法を提示しています。
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普遍性の限界
ラッセルの幸福論は、時代を超えて多くの人々に影響を与えてきましたが、その普遍性には限界も指摘されています。例えば、彼が提示する幸福への道筋は、西洋的な個人主義に基づいたものであり、異なる文化圏の人々にとっては受け入れがたい側面もあるかもしれません。また、ラッセルは幸福を個人の心の状態として捉えていますが、社会構造や経済的な不平等など、個人の努力だけでは解決できない問題も存在します。