## ラッセルの幸福論の周辺
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背景
バートランド・ラッセルが『幸福論』を執筆した1930年は、世界恐慌の只中にありました。イギリスもまた深刻な不況に苦しんでおり、失業者が街にあふれていました。このような閉塞感が漂う時代背景の中、人々はどのように幸福をつかめば良いのか、という問いは切実なものでした。ラッセル自身も、二度の世界大戦を経験し、社会主義活動などを通して社会と深く関わってきました。彼は、伝統的な道徳や宗教観が崩壊しつつある中で、人々が拠り所とすべき新たな倫理の必要性を感じていました。
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内容
『幸福論』の中でラッセルは、幸福を「活力に満ちた活動」と定義し、幸福を阻害する要因として「自己中心的な情念」を挙げます。彼は、不安や羨望、憎しみといった感情が、いかに人の心を蝕み、幸福を遠ざけるかを具体例を交えながら説明します。そして、幸福をつかむためには、自己中心的な殻を打ち破り、愛情や仕事、趣味などを通して、世界に広く関心を広げていくことが重要だと説きます。
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影響
『幸福論』は出版当時から大きな反響を呼び、世界中で翻訳され、多くの人々に読まれました。ラッセルの幸福論は、個人的な幸福の追求だけでなく、社会全体の幸福を実現することの重要性を説いた点で、当時の閉塞感を打ち破る光明となったと言えるでしょう。
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ラッセルの他の著作との関連
ラッセルは、『幸福論』以外にも、倫理学や社会哲学に関する多くの著作を残しています。『幸福論』で展開された幸福論は、彼の他の著作における思想とも深く関連しています。例えば、『西洋哲学史』では、古代ギリシャから現代に至るまでの哲学思想を、幸福の追求という観点から考察しています。また、『結婚論』や『教育論』などの著作では、幸福な人生を送るために必要な条件として、健全な人間関係や教育の重要性を説いています。