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ラッセルの幸福論に影響を与えた本

ラッセルの幸福論に影響を与えた本

スピノザ『エチカ』

バートランド・ラッセルの『幸福論』は、古代ギリシャ哲学から現代心理学まで、多岐にわたる思想を参考にしながら、幸福を達成するための具体的な方法を探求した画期的な書です。その中でも、17世紀の哲学者バールーフ・スピノザの主著『エチカ』は、ラッセルの幸福論に深い影響を与えた一冊として挙げられます。

理性による情念の統御

スピノザは『エチカ』において、万物の根源である神と自然を同一視する汎神論を唱え、人間の感情や情念もまた、自然法則に従って生じる必然的なものであると捉えました。そして、理性的な思考によって情念を理解し、統御することこそが、真の幸福、すなわち「自由」を獲得する道であると説いたのです。

ラッセルはスピノザのこの思想に共鳴し、『幸福論』の中で、「理性による情念の統御」こそが幸福の鍵であると繰り返し述べています。彼は、私たちを不幸に陥れる原因の多くは、怒りや嫉妬、不安といった、コントロールできない感情にあると指摘します。そして、スピノザのように、理性的な思考によってこれらの感情を客観的に観察し、理解することで、感情の波に乗りこなし、心を平静に保つことができると主張しているのです。

受動的な喜びから能動的な喜びへ

さらに、『エチカ』の影響は、ラッセルの幸福論における「能動的な喜び」の重視にも見て取れます。スピノザは、外界の刺激によって得られる受動的な喜びよりも、理性的な活動や創造的な活動から得られる能動的な喜びこそが、より高次で永続的な幸福をもたらすと考えました。

ラッセルもまた、受動的な快楽に溺れることは、一時的な満足感を与えるだけであり、真の幸福には繋がらないと述べています。彼は、仕事や趣味、社会貢献など、自らが積極的に関与し、能力を発揮することで得られる「能動的な喜び」を追求することこそが、充実感と幸福感をもたらすと主張しました。

このように、ラッセルの幸福論は、スピノザの『エチカ』における理性主義的な倫理観、情念の統御、そして能動的な喜びの重視といった思想から大きな影響を受けています。ラッセルは、スピノザの哲学を現代人に分かりやすく解釈し、日常生活の中で実践可能な幸福論として提示したと言えるでしょう。

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