## ラスキの国家論を読む
ラスキの生涯と著作活動
ハロルド・ジョセフ・ラスキ（Harold Joseph Laski, 1893-1950）は、イギリスの政治学者、経済学者です。彼は、特に国家論、政治思想史、政治哲学の分野で重要な貢献をしました。
ラスキは、初期には多元的国家論を唱え、国家の権力を制限する必要性を訴えました。しかし、後年には、資本主義社会における経済的不平等と社会的不正義を克服するために、国家が積極的に介入すべきだと主張するようになりました。
彼の主要な著作には、『国家論』（A Grammar of Politics, 1925年）、『自由の危機』（The Crisis of Liberty, 1940年）、『アメリカ民主主義』（The American Democracy, 1948年）などがあります。
「国家論」の概要
『国家論』は、ラスキの代表作であり、彼の国家観、政治観が最も体系的に示された著作です。本書は、国家の起源、本質、機能、形態、そして未来について考察しています。
ラスキは本書で、国家を「社会の中で、その領土内で、服従を強制する権利を独占的に主張する社会集団」と定義しています。彼は、国家の権力は、個人の権利と自由を保障するためにのみ正当化されると主張し、国家の権力行使には、常に市民の同意と参加が必要であると強調しました。
「国家論」における主要な論点
『国家論』では、以下の論点が特に重要です。
* **多元的国家論:** ラスキは、国家以外にも、家族、教会、労働組合など、様々な社会集団が存在し、それぞれが独自の目的と価値観を持つと主張しました。彼は、国家がこれらの集団の自由と自治を尊重し、調和を図るべきだと考えました。
* **権力の分散:** ラスキは、権力の集中は、腐敗と専制政治につながると警告し、権力の分散と地方分権の重要性を強調しました。
* **社会正義の実現:** ラスキは、国家の重要な役割の一つとして、社会正義の実現を挙げました。彼は、国家が、教育、医療、社会保障などの公共サービスを提供することで、社会的不平等を是正し、すべての人々に平等な機会を保障すべきだと主張しました。
「国家論」を読む際の注意点
『国家論』は、20世紀前半の社会状況を背景に書かれた著作であり、現代社会にそのまま当てはまらない部分もあります。しかし、国家と個人の関係、権力と自由、社会正義といった普遍的なテーマを扱っており、現代社会においても多くの示唆を与えてくれます。