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ラスキの国家論が扱う社会問題

ラスキの国家論が扱う社会問題

ラスキの国家論における中心的テーマ:社会権の実現

ハロルド・ラスキは、20世紀前半に活躍したイギリスの政治学者であり、その思想は、社会主義と民主主義を融合させた独自の政治理論として知られています。彼は、国家を単なる権力機構として捉えるのではなく、社会正義を実現するための手段として位置づけました。

ラスキの国家論において中心的なテーマとなるのは、「社会権の実現」です。彼は、市民が自由かつ平等な生活を送るためには、生存権、教育を受ける権利、労働の権利、社会保障を受ける権利など、様々な社会権が保障されなければならないと主張しました。これらの権利は、個人の尊厳を維持し、自己実現を達成するために不可欠な基盤となるからです。

資本主義社会における経済的不平等と社会問題

ラスキは、当時の資本主義社会が抱える矛盾と問題点に対して鋭い批判を展開しました。彼は、資本主義経済における自由競争は、富の偏在と貧困の発生を生み出し、社会に深刻な分断をもたらすと指摘します。そして、このような状況下では、形式的な自由や平等が保障されていても、真の意味での社会正義は実現されないと考えました。

彼は、一部の特権階級による富の独占と、大多数の人々に対する搾取が横行する社会においては、真の民主主義は機能しないと主張しました。なぜなら、経済的な困窮は、人々の政治参加への意欲や能力を阻害し、結果として、政治的意思決定プロセスが一部のエリート層によって支配されてしまうからです。

国家の積極的な介入による社会正義の実現

ラスキは、このような社会問題を解決するためには、国家が積極的な役割を果たす必要があると考えました。彼は、国家が経済活動に介入し、富の再分配や社会福祉政策を通じて社会的不平等を是正すること、そして、教育や労働環境の改善を通じて人々の能力開発を促進することの重要性を訴えました。

彼の主張は、国家による市場経済への介入を最小限に抑えようとする古典的な自由主義思想とは大きく異なります。ラスキは、真の自由と平等を実現するためには、国家による積極的な介入と社会権の保障が不可欠であると考えたのです。

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