## ラシーヌの Andromaque の価値
古典主義悲劇の傑作として
「アンドロマック」は、17世紀フランス古典主義演劇を代表する劇作家ジャン・ラシーヌによって1667年に発表された悲劇です。古代ギリシャのトロイア戦争後の物語を題材に、英雄ヘクトールの妻アンドロマック、ヘクトールの息子アステュアナクス、ギリシャの将軍ピュロス、ピュロスに恋するエピールの王女エルミオンヌといった登場人物たちの愛憎劇が描かれます。
三単一の法則の厳守
ラシーヌはアリストテレスの提唱した三単一の法則(時間の単一性、場所の単一性、 Handlungseinheit )を厳格に守ることで知られており、「アンドロマック」もその例外ではありません。物語は、ピュロスの宮殿という単一の場所で、一日のうちに起こる出来事として描かれます。この制約が、登場人物たちの心理描写に焦点を当て、緊張感あふれるドラマを生み出しています。
登場人物たちの心理描写
「アンドロマック」の最大の特徴は、登場人物たちの葛藤と苦悩を繊細かつ深淵に描いた心理劇としての側面にあります。愛と義務、復讐心と理性の間で揺れ動く彼らの姿は、時代を超えて観客の心を打ちます。特に、夫を失い、息子を人質に取られたアンドロマックの悲劇的な運命は、観客の同情を誘います。
格調高い詩的な言語
ラシーヌは、フランス古典主義演劇の特徴である alexandrin (アレクサンドラン) と呼ばれる12音綴の韻文を用い、格調高く美しい言語で作品を紡ぎました。「アンドロマック」の詩的な台詞は、登場人物たちの感情をより鮮やかに表現し、作品全体の芸術性を高めています。
後世への影響
「アンドロマック」は、初演当時から大成功を収め、ラシーヌの代表作としての地位を確立しました。 また、その後のフランス演劇界に多大な影響を与え、数多くの翻案作品やオペラが制作されました。現代においても、頻繁に上演される演劇作品の一つとして、世界中の人々に愛されています。