## ラシーヌのブリタニスの表現
悲劇の古典主義様式
ジャン・ラシーヌの『ブリタニクス』は、17世紀フランス演劇を席巻した古典主義の美学を体現する作品です。三単一律（時間の単一性、場所の単一性、筋の単一性）を厳守し、登場人物の行動よりも内面的な葛藤や心理描写に重点が置かれています。
高貴な文体と韻文による表現
古典主義悲劇の特徴である高貴な文体は、『ブリタニクス』においても顕著に見られます。洗練された表現、格調高い語彙が用いられ、登場人物の身分や教養の高さを表現しています。また、韻文形式であるアレクサンドランを用いることで、作品の悲劇性を高め、登場人物の心情をより効果的に表現しています。
情念の対立と葛藤の描写
『ブリタニクス』では、愛憎、権力欲、嫉妬など、人間の根源的な情念がぶつかり合う様子が描かれています。ネロンの歪んだ愛情、ブリタニスの無垢さと苦悩、ジュニの愛情と義務感の間での葛藤など、登場人物たちの内面は複雑に揺れ動き、それが劇的な緊張感を生み出しています。ラシーヌは、登場人物たちの葛藤を、独白や対話を通して繊細に描き出すことで、観客に深い共感と感動を与えています。