## ラシーヌのブリタニスの対称性
###
登場人物の対称性
ラシーヌの『ブリタニクス』において、登場人物配置には明らかな対称性が見られます。
まず、ネロンとブリタニクスは、ともに権力と愛を求める点で対称的な関係にあります。ネロンは皇帝の座とユンヌへの愛を、ブリタニクスは後継者としての地位とユンヌへの愛を求めています。
また、ユンヌとネリカも、愛をめぐる対照的な立場から対称性を生み出しています。ユンヌはネロンとブリタニクス、二人の男から愛される対象であり、ネリカはネロンに一途な愛を捧げながらも、その想いは届きません。
さらに、アグリッピーヌとナルシスは、それぞれの思惑に従ってネロンとブリタニクスに影響を与えようとします。アグリッピーヌは自身の権力を維持するため、ナルシスは出世を望んでネロンに助言を与えます。このように、登場人物たちは愛と権力をめぐる対立軸において、鏡像関係のように配置されています。
###
構造の対称性
『ブリタニクス』は五幕構成の悲劇ですが、その構造にも対称性が見て取れます。
例えば、第一幕ではブリタニクスとユンヌの愛、ネロンのユンヌへの横恋慕が描かれます。そして、第五幕では、ネロンがブリタニクスを毒殺し、ユンヌは修道院に入ることを決意します。このように、愛と権力をめぐる争いが、劇の始まりと終わりにおいて対称的に描かれていることが分かります。
また、第三幕は劇の中心に位置し、ネロンがユンヌを自分のものにしようと決意する場面が描かれます。これは、ネロンの暴君への転換点であり、劇全体における重要な転換点を示しています。
このように、『ブリタニクス』は登場人物配置だけでなく、劇の構造においても、綿密に計算された対称性を持っていると言えるでしょう。