## ラシーヌのブリタニクス周辺
1. 創作の背景
「ブリタニクス」は、1669年にジャン・ラシーヌによって書かれた五幕の悲劇です。ローマ皇帝クラウディウスの息子ブリタニクスと、ネロの確執と、それを利用するアグリッピーヌの陰謀を描いています。本作は、古代ローマの歴史家タキトゥスの「年代記」を主な題材としています。
2. 登場人物と関係性
* **ネロ:** ローマ皇帝。権力と愛の狭間で苦悩する。
* **ブリタニクス:** クラウディウスの実子。ネロの異母兄弟。
* **ジュニー:** ブリタニクスが愛する女性。ネロもまた彼女に恋心を抱いている。
* **アグリッピーヌ:** ネロの母。権力欲が強く、息子を操ろうとする。
* **ナルシス:** ネロの家庭教師。陰謀に加担し、ネロに悪影響を与える。
3. 作品の主題
「ブリタニクス」は、権力と愛、そして母と子の複雑な関係を描いた作品です。ネロの権力への渇望、ブリタニクスとジュニーの純粋な愛、アグリッピーヌの歪んだ愛情などが複雑に絡み合い、悲劇へと繋がっていきます。
4. 上演と評価
「ブリタニクス」は、1669年12月にパリのブルゴーニュ劇場で初演されました。初演当初は、古典主義の規則から外れた部分があると批判を受けましたが、その後は高い評価を受け、ラシーヌの代表作の一つとして知られるようになりました。
5. ラシーヌの作品における位置づけ
「ブリタニクス」は、「アンドロマック」や「フェードル」といったラシーヌの代表作と比較すると、登場人物の心理描写がより緻密であると評価されています。特に、権力と愛の間で揺れ動くネロの心理描写は、ラシーヌの卓越した人間観察眼を示すものとして高く評価されています。