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ラシーヌのブリタニクスを読む

ラシーヌのブリタニクスを読む

ブリタニクスを読むということ

ジャン・ラシーヌの悲劇「ブリタニクス」を読むことは、17世紀フランス古典主義演劇の精髄に触れる経験です。1669年に初演された本作は、ローマ皇帝ネロの治世初期、権力と愛憎の渦巻く宮廷を舞台に、若きブリタニクス、ネロ、ジュニエ、ナルシスといった登場人物たちの葛藤を描きます。

史実と虚構

ラシーヌは史実を題材としながらも、史実を忠実に再現することよりも、登場人物たちの心理描写や劇的な展開に重点を置いています。例えば、ブリタニクスとネロの対立は、歴史的にはネロによるブリタニクスの毒殺という形で決着しますが、劇中ではネロの陰謀が進行する中で、ブリタニクスとジュニエの愛、ネロの狂気、そしてナルシスの暗躍が交錯し、緊張感あふれるドラマが展開されます。

古典主義の美学

「ブリタニクス」は、三単一の法則、すなわち時間の単一性、場所の単一性、筋の単一性を厳守した古典主義悲劇の傑作として知られています。劇中の出来事は全て24時間以内に、ネロの宮殿という限られた場所で展開され、ブリタニクスをめぐる愛憎劇という単一の筋書きに集約されます。また、格調高い韻文詩で書かれた登場人物たちの台詞は、人間の情念を鮮やかに描き出し、読者に深い感動を与えます。

登場人物たちの心理

「ブリタニクス」は、権力への野心に駆られるネロ、愛と正義の間で揺れ動くジュニエ、純粋であるがゆえに権力闘争に巻き込まれていくブリタニクス、そして己の利益のみを追求するナルシスといった、対照的な登場人物たちの心理劇でもあります。彼らの葛藤は、人間の愛憎、野心、嫉妬といった普遍的なテーマを浮かび上がらせ、現代にも通じる問題提起を投げかけています。

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