## ラシーヌのブリタニクスの表象
ネロンの権力への目覚め
ラシーヌの悲劇『ブリタニクス』は、暴君ネロンの誕生と、その過程で犠牲となる若きブリタニクスを描いています。劇中でネロンは、それまでの養子としての穏やかな顔つきを捨て、権力への野望を露わにする複雑な人物として描かれます。
彼の変化は、ブリタニクスへの態度、そしてユニアへの愛を通して顕著に表象されます。
ブリタニクスは、ネロンの実母アグリッピナによって帝位継承者として擁立された経緯があり、ネロンにとって権力と母親の愛情の両方において、常に意識せざるを得ない存在でした。
劇の冒頭では、ネロンは既にブリタニクスからユニアを奪い、彼の権威に挑戦する姿勢を見せています。
ネロンのユニアへの愛は、単なる恋愛感情を超えた、権力欲と支配欲の表れとして描かれます。
ユニアはブリタニクスを愛しており、ネロンの愛に応えようとしないため、彼のプライドは深く傷つけられます。
このことが、ネロンの残忍性をさらに助長し、最終的にブリタニクス殺害へと彼を駆り立てる要因の一つとなります。
ブリタニクスの純粋さと無垢さ
一方、ブリタニクスは、ネロンとは対照的に、純粋さ、無垢さ、正義感を象徴する存在として描かれています。
彼は権力闘争に無関心であり、ユニアへの愛と、義母であるアグリッピナへの忠誠心を何よりも大切にします。
ブリタニクスは、ネロンの策略により窮地に追い込まれながらも、最後まで自らの信念を貫きます。
彼はユニアへの愛を公言し、ネロンの支配に抵抗を示します。
しかし、彼の純粋さと正義感は、残酷な権力闘争の中では無力であり、最終的に彼はネロンの陰謀によって毒殺されてしまいます。
ブリタニクスの死は、権力への野望と、それがもたらす悲劇を象徴しています。
彼の死は、観客に、権力というものがいかに容易に人を corrupt し、破滅へと導くのかを突きつけます。