## ラシーヌのブリタニクスの技法
古典主義の三原則
「ブリタニクス」は、アリストテレスの詩学に基づく古典主義演劇の三原則(三一致)を忠実に守って書かれています。
* **時間の統一:** 劇中の時間は24時間以内に収まっており、ネロンがブリタニクスを毒殺する決意をしてから実行に移すまでの一日の出来事が描かれています。
* **場所の統一:** 舞台はネロの宮殿の一室に限定されており、場面転換は行われません。
* ** Handlungの統一:** 物語はネロンとブリタニクスの対立、そしてジュニーに対する二人の愛憎劇という一つの筋に絞り込まれています。
心理描写
ラシーヌは「ブリタニクス」において、登場人物たちの内面、特に葛藤や欲望を深く掘り下げることに重点を置いています。
* **独白と傍白:** 登場人物たちの心の声である独白や傍白を効果的に用いることで、彼らの本心や葛藤を観客に直接伝えています。特に、ネロンが自らの悪行と葛藤する独白は、彼の内面の複雑さを浮き彫りにしています。
* **簡潔な台詞回し:** 無駄を省いた簡潔な台詞回しによって、登場人物たちの感情の機微を際立たせています。短い言葉の中に、彼らの愛憎や不安、絶望が凝縮されています。
運命と自由意志
「ブリタニクス」では、登場人物たちが運命に翻弄されながらも、その中で懸命に自由意志に基づいて行動しようとします。
* **歴史的事実:** 史実を基にした物語でありながら、ラシーヌは登場人物たちに一定の自由意志を与え、歴史の必然と個人の選択の狭間で葛藤する姿を描いています。
* **悲劇的結末:** 運命に抗いきれず、登場人物たちは悲劇的な結末を迎えます。しかし、その運命の中で見せる彼らの抵抗や選択は、人間の尊厳と悲劇性を際立たせています。
その他の技法
上記以外にも、「ブリタニクス」にはラシーヌの卓越した劇作術が随所に見られます。
* **対照的な人物配置:** 純粋なブリタニクスと邪悪なネロン、献身的なジュニーと策略家アグリッピーヌなど、対照的な人物を配置することでドラマ性を高めています。
* **緊張感の持続:** 登場人物たちの対立や陰謀、愛憎劇を通して、物語全体に緊張感が持続し、観客を舞台に引き込みます。
* **詩的な言語:** 韻文で書かれた美しい台詞は、登場人物たちの感情をより深く、そして劇的に表現しています。