## ラシーヌのフェードルの案内
ジャン・ラシーヌの悲劇「フェードル」について解説します。
ジャン・ラシーヌ作の「フェードル」は、17世紀フランス古典主義演劇を代表する傑作の一つです。1677年1月1日にオテル・ド・ブルゴーニュ劇場で初演されました。
作品のあらすじ
クレタ島の王妃フェードルは、継息子であるヒッポリュトスに秘かな恋心を抱いています。しかし、それは許されざる禁断の愛。フェードルは自身の想いに苦悩し、死を望みます。夫であるテセウス王が不在の間、彼女は誤ってヒッポリュトスに自分の気持ちを告白してしまいます。
ヒッポリュトスは恐怖と嫌悪感を抱き、フェードルの愛を拒絶します。
その後、テセウス王が帰還しますが、フェードルの乳母であるオイノーネは、自分の保身のために嘘の告げ口をします。
オイノーネは、ヒッポリュトスがフェードルを誘惑したとテセウスに吹き込みます。
怒り狂ったテセウスは、海神ポセイドンにヒッポリュトスの死を願います。
やがて、ヒッポリュトスは海の怪物によって殺されます。
真実を知ったフェードルは、自責の念に駆られ、毒を飲んで自ら命を絶ちます。
登場人物
* **フェードル:** クレータ島の王妃、テセウスの妻、ヒッポリュトスの継母。
* **ヒッポリュトス:** テセウスとアマゾネスの女王ヒッポリュテーの息子。
* **テセウス:** アテネの王、フェードルの夫、ヒッポリュトスの父。
* **オイノーネ:** フェードルの乳母。
* **アリシー:** アテネの王女、ヒッポリュトスの恋人。
* **テラメーヌ:** ヒッポリュトスの老いた教師。
作品の主題
「フェードル」は、禁断の愛、罪の意識、運命の残酷さといった普遍的なテーマを扱っています。
特に、**情念**と**理性**の対立が重要なテーマとして描かれています。
フェードルは、理性では抑えきれない情念に苦しめられ、破滅へと突き進んでいきます。
彼女の悲劇は、人間存在の弱さと、抗うことのできない運命の力を浮き彫りにしています。
原作と影響
ラシーヌの「フェードル」は、エウリピデスやセネカなどの古代ギリシャ・ローマの悲劇作家による同名の作品を基にしています。
しかし、ラシーヌは単なる翻案ではなく、独自の解釈と創造性を加えることで、17世紀フランスの観客に訴える傑作を生み出しました。
「フェードル」の評価
「フェードル」は、初演当時から高い評価を受け、フランス古典主義演劇の最高傑作の一つとされています。
ラシーヌの卓越した韻文、心理描写の深さ、そして人間の心の奥底をえぐるようなテーマは、時代を超えて観客を魅了し続けています。