## ラシーヌのフェードルの批評
古典主義の傑作
「フェードル」は、17世紀フランス古典主義を代表する劇作家ジャン・ラシーヌによって1677年に発表された悲劇です。ギリシャ神話に登場するクレタ島の王妃パイドラーを題材とし、禁断の恋に苦悩する人間の姿を、心理描写を駆使して鮮やかに描き出しています。
三単一律の遵守
ラシーヌはアリストテレスの提唱した三単一律（時間の単一性、場所の単一性、 Handlungの単一性）を厳格に守っており、「フェードル」もその例外ではありません。物語は、テセウスの息子ヒッポリテに対するフェードルの禁断の恋を中心に、24時間以内の出来事が、トロイゼーンの宮殿という一つの場所で展開されます。
運命と情念の葛藤
登場人物たちは、抗うことのできない運命と、理性では抑えきれない情念の狭間で苦悩します。特に、継子であるヒッポリテに恋焦がれるフェードルの苦悩は、作品の大きなテーマとなっています。彼女は自身の想いを恥じ、それを隠そうとする一方で、抑えきれない情熱に突き動かされていきます。
高貴な文体と心理描写
「フェードル」は、古典主義の美意識を反映した格調高い韻文詩で書かれています。洗練された言葉遣いは、登場人物たちの高貴な身分と、作品全体の悲劇性を際立たせています。また、ラシーヌは登場人物たちの内面を丁寧に描写することにより、彼らの苦悩をより深く描き出しています。
多様な解釈を許容する作品
「フェードル」は、初演当時から様々な解釈を生み出してきた作品です。フェードルの苦悩は、禁断の恋に悩む一人の女性の悲劇として解釈することもできれば、人間存在の根源的な苦悩を表象したものと捉えることもできます。また、作品全体を通して、運命と自由意志、理性と情念といった普遍的なテーマが浮かび上がってきます。