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ラシーヌのフェードルの思想的背景

## ラシーヌのフェードルの思想的背景

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古代ギリシャ悲劇の影響

ラシーヌの『フェードル』は、エウリピデスやセネカといった古代ギリシャ・ローマの劇作家による先行作品、特にエウリピデスの『ヒッポリュトス』から大きな影響を受けています。ラシーヌ自身も、自作の序文においてエウリピデスの作品を高く評価し、自身の作品との関連性を明言しています。

ギリシャ悲劇の特徴である運命の力、神々の意志、人間の情念の葛藤といった要素は、『フェードル』にも色濃く反映されています。フェードルを苦しめる禁断の恋は、彼女自身の意志ではなく、女神アフロディーテの呪いによるものとして描かれ、抗うことのできない運命の残酷さを際立たせています。

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17世紀フランス古典主義の美意識

『フェードル』は、17世紀フランスを支配した古典主義の美意識を体現した作品でもあります。古典主義は、理性、秩序、均衡、簡潔さを重視し、人間の普遍的な真理を描こうとしました。

ラシーヌは三単一の法則を厳格に守り、時間、場所、筋の一致を保つことで、劇の構成に秩序と均衡をもたらしています。また、登場人物たちの台詞は洗練された韻文で綴られ、古典主義特有の高尚な文体が作品全体を貫いています。

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ジャンセニスムの影響

ラシーヌは、厳格なカトリックの教派であるジャンセニスムの影響を受けていたと言われています。ジャンセニスムは、人間の原罪と神の恩寵を強調し、人間の意志の弱さと救済の困難さを説きました。

『フェードル』においても、フェードルは自身の情念に苦悩し、自らを「罪深い怪物」と呼び、神の赦しを請います。彼女の苦悩は、ジャンセニスム的な人間の罪深さ、そして情念に揺り動かされる人間の弱さを反映していると言えるでしょう。

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