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ラシーヌのフェードルと言語

## ラシーヌのフェードルと言語

古典主義の美学を体現する劇詩

ラシーヌの『フェードル』は17世紀フランス古典主義を代表する傑作であり、その卓越した言語表現は時代を超えて高く評価されています。韻文詩を用いた格調高い文体は、登場人物たちの高貴な身分と作品世界全体の荘重な雰囲気を構築する上で重要な役割を果たしています。

抑制と暗示に満ちた表現

ラシーヌは劇中で直接的な感情表現や残酷な描写を避け、抑制と暗示を駆使することで、登場人物たちの内面に秘められた激しい情念を浮かび上がらせています。例えば、フェードルが義理の息子ヒッポリュトスへの禁断の恋心を告白する場面では、直接的な言葉を用いる代わりに、比喩や婉曲表現を多用することで、彼女の苦悩と罪の意識をより深く表現しています。

韻文詩が織りなす音楽性とリズム

『フェードル』はアレクサンドランを用いた韻文詩で書かれており、その音楽性とリズムは作品に独特の美しさと情感を与えています。規則正しい脚韻と音節数は、登場人物たちの台詞に格調と美しさを与えるだけでなく、彼らの感情の動きや葛藤をより繊細に表現する効果も持っています。

古典主義の規範と個性の両立

ラシーヌは古典主義の三単一体や教訓性といった規範を守りながらも、登場人物たちの心理描写や言語表現において独自の個性を発揮しています。特に、フェードルの苦悩と葛藤、そして破滅へと向かう姿は、古典的な悲劇のヒロイン像に新たな深みと複雑さを与え、後世の作品に大きな影響を与えました。

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