## ラシーヌのフェードルからの学び
人間の情念の力と脆さについて
ラシーヌの『フェードル』は、人間の情念の抗いがたい力と、それがもたらす破壊的な影響を描いた作品です。主人公フェードルは、継子であるヒッポリュトスに禁断の恋心を抱き、その愛と罪悪感、羞恥心の狭間で苦悩します。彼女の情念は理性では制御できないほど強く、彼女自身もそのことに苦しみ、運命に翻弄されていきます。
社会的な束縛と個人の欲望の対立
フェードルは、クレタ島の王妃という高貴な身分にありながら、自身の欲望と社会的な規範の板挟みになります。彼女の愛は、当時の倫理観からすれば決して許されるものではなく、彼女は絶えず自分の立場と欲望の狭間で苦しみます。この葛藤は、当時の社会における個人の自由と責任、そして社会的な制約の在り方について問いかけるものとなっています。
運命と自由意志
『フェードル』では、登場人物たちは自らの意志によって行動しているように見えながらも、最終的には運命の糸に操られているかのように悲劇的な結末を迎えます。これは、古代ギリシャ悲劇の特徴である「運命の不可避性」を強く意識させるものであり、人間の自由意志と運命の力関係について考えさせられます。フェードル自身の苦悩や、彼女を取り巻く状況は、抗うことのできない運命の力と、その中で見いだそうとする人間の意志の葛藤を浮き彫りにしています。
言語の力と表現の美しさ
ラシーヌは、古典主義の三大劇作家の一人として、その洗練された文体と格調高い韻文で知られています。 『フェードル』においても、登場人物たちの心理描写や葛藤、そして悲劇的な状況が見事に表現されており、フランス古典主義演劇の傑作として評価されています。特に、フェードルが自身の禁断の愛を告白する場面や、苦悩の末に運命を受け入れる場面での独白は、人間の心の奥底をえぐり出すような力強さを持っています。