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ラシーヌのアンドロマックの対称性

## ラシーヌのアンドロマックの対称性

登場人物の配置における対称性

まず、登場人物の配置に注目すると、アンドロマック、ピュロス、エルミオンヌ、オレステスの四人の主要人物は、愛と義務の間で葛藤する姿が対照的に描かれていることがわかります。

アンドロマックは、夫であるヘクトルへの愛と、息子アステュアナクスを守る義務との間で板挟みになります。一方、ピュロスは、アンドロマックへの愛と、エルミオンヌとの政略結婚という義務との間で揺れ動きます。

エルミオンヌとオレステスもまた、愛と義務、そして復讐心の間で苦悩します。エルミオンヌはピュロスへの愛と、裏切られたことへの復讐心との間で、オレステスはエルミオンヌへの愛と、ギリシャへの義務との間で、それぞれ葛藤を抱えています。

このように、登場人物たちは愛と義務という対照的なテーマを中心に、鏡像のように配置されていると言えるでしょう。

構造における対称性

さらに、「アンドロマック」は五幕構成の古典的な悲劇ですが、その構造にも対称性を見出すことができます。

第一幕では、主要人物たちの状況と、それぞれの抱える葛藤が提示されます。そして第五幕では、一連の悲劇的な出来事によって、登場人物たちの運命が決定づけられます。

この両端の幕を対比的に見ると、登場人物たちの立場や感情が逆転していることがわかります。例えば、第一幕ではピュロスはアンドロマックに求婚する立場ですが、第五幕では逆に、アンドロマックはピュロスを拒絶し、ヘクトルへの愛を貫きます。

このように、「アンドロマック」は構造的にも対称性を持ち合わせており、それが作品のテーマをより一層際立たせていると言えるでしょう。

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