## ラシーヌのアンドロマックと時間
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時間の圧縮
戯曲「アンドロマック」では、わずか24時間という短い時間枠の中で物語が展開されます。これは古典主義演劇の三統一の法則(時間の統一、場所の統一、 Handlungの統一)に従ったものです。ラシーヌは、この時間の制約の中で、登場人物たちの葛藤と感情の激化を効果的に描き出しています。
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時間の遅延
劇中では、登場人物たちの決断や行動が遅延される場面が繰り返し登場します。例えば、アンドロマックは息子のアステュアナックスを救うためにピュロスとの結婚を迫られますが、その決断を先延ばしにしようとします。また、オレステもHermioneへの愛と復讐心との間で葛藤し、行動に移せないまま時間が経過していきます。
時間の遅延は、登場人物たちの内面の苦悩を際立たせるとともに、観客にサスペンスを与え、劇的な緊張感を高める効果があります。
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時間の対比
「アンドロマック」では、過去の時間と現在の時間が対比的に描かれています。登場人物たちは、トロイア戦争の記憶や亡くなった家族への想いに苦しめられながら、現在の状況に翻弄されていきます。
過去の悲劇と現在の苦境との対比は、登場人物たちの運命の残酷さを浮き彫りにするとともに、人間の業の深さを暗示しています。