## ラサールの労働者綱領を読む前に
1. フェルディナント・ラサールという人物を知る
ラサールの労働者綱領を読む前に、まず著者のフェルディナント・ラサールという人物について理解を深めることが重要です。ラサールは19世紀ドイツの思想家、政治家で、マルクスと同時代に活躍した社会主義運動の指導者の一人として知られています。ユダヤ系ドイツ人という出自を持ち、弁護士として活動する傍ら、労働者の権利擁護や普選権運動に尽力しました。
ラサールは、国家による積極的な介入を通じて労働者の経済的解放を目指す「国家社会主義」と呼ばれる思想を唱え、その理論は後世のドイツ社会主義やナチズムにも影響を与えたとされています。しかし、その一方で、マルクス主義者からは、資本主義の枠組み内での改革を目指す「ブルジョア社会主義」と批判されることもありました。
ラサールの生涯や思想背景を知ることで、「労働者綱領」が書かれた当時の時代背景や、ラサールがどのような問題意識を持ってこの書を著したのかをより深く理解することができます。
2. 19世紀ドイツの社会状況を理解する
「労働者綱領」は、19世紀後半のドイツにおける労働者階級の置かれた状況を背景に書かれています。当時のドイツは、産業革命の進展に伴い、資本主義経済が急速に発展していました。しかし、その一方で、貧富の格差の拡大や労働者の劣悪な労働環境など、様々な社会問題も深刻化していました。
ラサールは、このような時代状況の中で、労働者階級の窮状を訴え、その権利を擁護するために「労働者綱領」を執筆しました。当時のドイツの社会状況、特に労働者階級の置かれた状況を理解することで、「労働者綱領」が訴える内容をより具体的にイメージすることができます。
3. マルクスの思想との比較を試みる準備をしておく
ラサールは、マルクスと同時代に活躍した社会主義思想家として知られていますが、その思想はマルクスの思想とはいくつかの点で異なっています。ラサールは、国家による積極的な介入を通じて労働者の経済的解放を目指す「国家社会主義」を唱え、既存の国家体制を利用した社会主義の実現を目指していました。
一方、マルクスは、国家は支配階級の道具に過ぎないと考え、国家権力の打倒を通じて労働者階級によるプロレタリア独裁を実現し、最終的には共産主義社会を実現することを目指していました。
「労働者綱領」を読む際には、ラサールの思想とマルクスの思想を比較し、その共通点と相違点を明確に意識することで、それぞれの思想の特徴や歴史的な意義をより深く理解することができます。