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ヤーコブソンの言語学と詩学を読む前に

ヤーコブソンの言語学と詩学を読む前に

言語学と詩学の関係性について考える

 ローマン・ヤーコブソンは、20世紀を代表する言語学者であり文芸理論家の一人です。彼の提唱する「言語の詩的機能」は、言語が持つ多様な側面の中でも、特に文学作品における言語の働きを理解する上で重要な概念です。ヤーコブソンの著作『言語学と詩学』は、この言語の詩的機能を中心に、言語学と文芸批評の融合を目指した重要な論文です。

 この論文を読む前に、まず「言語学と詩学(文芸批評)はどのように関係しているのか」について考えてみましょう。言語学は言語そのものを研究対象とする学問であり、音声、文法、意味、語彙など、言語を構成する要素や、それらがどのように組み合わさって意味をなすのかを分析します。一方、詩学や文芸批評は、文学作品を分析し、その構造、テーマ、表現技法などを明らかにすることを目的とします。

 一見すると、言語学と詩学は異なる分野のように思えるかもしれません。しかし、文学作品もまた言語によって構成されている以上、そこには必ず言語学的な側面が存在します。詩人は、言葉を選び、文を組み立て、比喩や韻律などの表現技法を用いることで、独自の文芸世界を創造します。つまり、詩学は言語学の知識なしには成立しないと言えるでしょう。

ヤーコブソンの言語モデルについて理解する

 ヤーコブソンは、あらゆる言語行為には、以下の6つの要素が含まれていると考えました。

* **話者:** メッセージを発する主体
* **受信者:** メッセージを受け取る主体
* **文脈:** メッセージが伝達される状況や背景
* **メッセージ:** 伝達される内容
* **接触:** 話者と受信者を結ぶ物理的・心理的な経路
* **コード:** メッセージを符号化するための共通の体系(言語など)

 ヤーコブソンは、それぞれの言語要素が特定の機能を担っていると考え、以下の6つの言語機能を提唱しました。

* **表出機能:** 話者の感情や態度を表す機能
* **呼応機能:** 受信者に働きかけ、反応を促す機能
* **指示対象機能:** 文脈や状況を指し示す機能
* **詩的機能:** メッセージ自体に焦点を当てる機能
* **メタ言語機能:** コード(言語)自体を説明する機能
* **交話機能:** 接触を維持するための機能

 ヤーコブソンの言語モデルは、言語が単なる情報伝達のための道具ではなく、コミュニケーションにおける複雑な役割を担っていることを示しています。

詩的機能とは何かを考える

 ヤーコブソンは、6つの言語機能の中でも特に「詩的機能」を重視しました。詩的機能とは、メッセージ自体に焦点を当て、言語の形式的な側面を強調することで、美的効果を生み出す機能です。詩や文学作品だけでなく、日常会話や広告など、あらゆる言語活動において、この詩的機能は潜在的に作用しています。

 例えば、「彼はライオンのように勇敢だ」という比喩表現を考えてみましょう。この文は、単に「彼は勇敢だ」と言い換えることもできます。しかし、比喩を用いることで、彼の勇敢さをより鮮やかに印象的に表現することができます。このように、詩的機能は、言語表現に豊かさと深みを与え、受信者に強い印象を与える効果を持っています。

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