## ヤーコブソンの言語学と詩学のメカニズム
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言語の六つの機能
ロマン・ヤーコブソンは、あらゆる言語行為には六つの要素が関与し、それぞれに対応する六つの機能があると提唱しました。
* **話者**: メッセージの発信者。感情表出機能と対応。
* **受信者**: メッセージの受信者。 懇願機能と対応。
* **文脈**: メッセージが伝達される状況や参照物。 指示対象機能と対応。
* **メッセージ**: 伝達される内容そのもの。 詩的機能と対応。
* **接触**: 発信者と受信者を結ぶ物理的・心理的な経路。 交話機能と対応。
* **コード**: メッセージが符号化される共通の言語体系。 メタ言語機能と対応。
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各機能の詳細
それぞれの機能は、特定の言語的側面を強調する役割を担っています。
* **感情表出機能**: 話し手の感情や態度を表現する。感嘆詞や主観的な表現を用いる。
* **懇願機能**: 受信者に特定の行動を促す。命令形や疑問文を用いる。
* **指示対象機能**: 文脈内の特定の事物や状況を指し示す。代名詞や指示詞を用いる。
* **詩的機能**: メッセージそのものの形式に焦点を当てる。音韻、リズム、語彙の選択などを駆使する。
* **交話機能**: コミュニケーションを確立・維持する。挨拶や相槌などが該当する。
* **メタ言語機能**: 用いられているコード(言語)自体について言及する。語彙の定義などを確認する際に用いる。
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詩的機能の特異性
ヤーコブソンは、詩的機能が他の機能とは一線を画すと考えました。他の機能は言語の外部に焦点を当てる一方で、詩的機能は言語自体に内在し、言語形式を前景化する役割を担います。
詩的機能は、言語の軸である「選択」と「組み合わせ」の働きかけを強調します。
* **選択**: 類似した意味を持つ複数の語彙の中から、特定の語彙を選択する。
* **組み合わせ**: 選択された語彙を、音韻やリズムを考慮しながら文脈の中で組み合わせていく。
詩的言語では、この選択と組み合わせのプロセスが意識的に操作され、言語形式に注目が集まります。
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詩的機能とその他の機能の関係性
詩的機能は、他の機能を排除するのではなく、むしろ他の機能と相互作用しながら機能します。詩作品であっても、感情や状況を表現したり、読者に訴えかけたりする要素は存在します。
重要なのは、詩的機能が言語形式を前景化することで、メッセージに対する受信者の意識に影響を与える点です。
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