ヤスパースの理性と実存の関連著作
ヤスパースの主著
* **哲学 (Philosophie)** (1932): ヤスパースの主著であり、彼の哲学体系を包括的に示した書物です。理性と実存の関係は、この書物全体を貫くテーマとなっています。ヤスパースは、伝統的な哲学が理性によって世界を理解しようとする「志向性」を重視してきたと批判し、人間存在の根源に迫るためには、理性では捉えきれない「実存」への問いが必要であると主張します。
* 第1部「哲学への導き」では、哲学の歴史を振り返りつつ、理性的な認識の限界と、実存的な問いの重要性を論じています。
* 第2部「世界志向」では、科学や歴史、宗教など、様々な角度から世界を理解しようと試みる理性の働きを分析しています。
* 第3部「実存の照明」では、限界状況や不安、死といった経験を通して、人間存在の有限性と自由が浮き彫りになることを論じています。
* **理性と実存 (Vernunft und Existenz)** (1935): この書物は、「哲学」の内容をより分かりやすく解説したものであり、特に理性と実存の関係に焦点を当てています。ヤスパースは、理性が客観的な世界認識を目指すのに対し、実存は主観的な自己理解を指向すると説明します。そして、両者は対立するものではなく、実存は理性によって照らし出され、理子は実存によってその限界を示されるという、相互補完的な関係にあると論じています。
理性と実存の関係を考察する上で重要な著作
* **哲学入門 (Einführung in die Philosophie)** (1950): 一般読者向けに書かれた哲学入門書です。ここでは、理性と実存の関係を、日常的な言葉を用いながら分かりやすく解説しています。ヤスパースは、我々が日常経験する「驚き」や「疑問」を出発点として、哲学的思考がどのように展開していくのかを示します。そして、理性的な認識の限界を自覚することで、実存的な問いに向き合うことの重要性を強調しています。
* **限界状況 (Die Grenzsituationen)** (1932): 人間存在の有限性を突きつける「限界状況」は、ヤスパース哲学の重要な概念です。死や苦しみ、闘争といった限界状況に直面することで、人間は自身の有限性を自覚し、実存的な問いへと向かうことになります。この書物では、限界状況における人間のあり方を通して、理性と実存の関係が考察されています。
その他の関連著作
* **ニーチェとキリスト教 (Nietzsche und das Christentum)** (1938): ニーチェは、西洋哲学における理性主義を批判し、人間の非理性的側面を重視した哲学者として知られています。ヤスパースは、ニーチェの思想を深く考察し、その限界と可能性を探求しました。この書物は、理性と非理性、実存とニヒリズムの関係を考える上で重要な示唆を与えてくれます。
* **歴史の起源と目標 (Vom Ursprung und Ziel der Geschichte)** (1949): ヤスパースは、歴史を人間の自由と責任が織りなすドラマと捉えました。この書物では、歴史における理性の役割と限界、そして歴史の背後にある超越者（神）への問いが考察されています。歴史的視点から、理性と実存の関係を考察する上で重要な著作です。