## ヤスパースの理性と実存の発想
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限界状況における実存の自覚
ヤスパースにとって、「実存」は、日常的な意識のレベルを超えた、人間の根源的な存在のあり方を指します。彼は、人間が
「限界状況」と呼ばれる、死、苦悩、責任、自由などの避けられない極限的な状況に直面した時に、
初めて自らの有限性と実存を意識すると考えました。
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実存的コミュニケーションと他者
ヤスパースは、人間が真に「実存」に目覚めるためには、他者との「実存的コミュニケーション」が必要であるとしました。
他者との間にある越えられない溝を意識しつつも、互いに理解し合おうとする真摯な対話を通してのみ、
私たちは自身の存在の深みと、世界における自分の位置を理解することができると考えたのです。
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理性による実存の解明と限界
ヤスパースは、「実存」を解明する手段として「理性」を重視しました。彼は、理性を通して、
人間の自由や責任、歴史や世界における人間の位置などを理解できると考えました。ただし、理性は万能ではなく、
「実存」の全体像を捉えることはできないとも主張しました。「実存」は、理性の限界を超えた、
より深遠なものであると考えたからです。
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超越者との関係における実存
ヤスパースは、人間を超越した存在である「超越者」との関係においても、「実存」が重要な意味を持つと考えました。
彼は、「超越者」を、人間が理性によって完全に把握することのできない、絶対的な謎として捉えました。そして、「超越者」との間で
希求と挫折を繰り返しながらも、対話を求め続けることによって、人間は自身の有限性を自覚し、「実存」を深めていくことができると考えたのです。