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ヤスパースの理性と実存の力

## ヤスパースの理性と実存の力

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理性と実存の対比

ヤスパースにおいて、理性と実存は人間の存在を理解する上で重要な二つの側面を示しています。彼は、伝統的な哲学が理性によって世界を完全に把握できると考えてきたことを批判し、理性では捉えきれない人間の存在の深淵として「実存」を提示しました。

理性は、概念や論理を用いて客観的な世界を認識し、知識や技術を生み出す力を持ちます。一方で、実存は、個人の内面的な経験や自由、不安、死といった限界状況における生の感覚に関わります。理性は普遍的なものを志向するのに対し、実存は個別具体的な状況における、一回的な生のあり方を重視します。

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実存への超越

ヤスパースは、人間は理性のみによって生きることはできず、実存的な問いに向き合わざるを得ないと考えました。彼は、実存への超越を促すものとして、「限界状況」という概念を提示します。限界状況とは、死や苦しみ、自由の責任、偶然性といった、人間存在の根底に関わる避けられない状況を指します。

限界状況に直面したとき、人間は理性的な思考の限界を感じ、不安や絶望に陥りながらも、同時に自身の有限性と自由を自覚することになります。ヤスパースは、この限界状況における苦悩と絶望を通して、人間ははじめて真に実存的な問いへと向き合い、自己を超越していくことができると考えました。

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啓示と暗号

実存への超越において重要な役割を果たすのが、「啓示」と「暗号」という概念です。啓示とは、限界状況において、超越者からの呼びかけやメッセージとして、個人の内面に現れるものを指します。それは、理性では捉えきれない、直感的で非合理的な体験として現れます。

暗号とは、啓示を解釈するための手がかりとなる、象徴や比喩などを含んだ表現のことです。ヤスパースは、哲学や宗教、芸術などの様々な文化現象の中に、実存を表現する暗号が隠されていると考えました。

彼は、これらの暗号を読み解くことを通して、私たちは超越者との間接的なコミュニケーションを可能にし、実存的な意味を見出すことができると考えました。

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