Skip to content Skip to footer

ヤスパースの理性と実存から学ぶ時代性

ヤスパースの理性と実存から学ぶ時代性

ヤスパースにおける「時代」

ヤスパースにとって、「時代」は単なる時間的な区分ではありません。彼は歴史を、客観的に捉えられる均質な流れとしては捉えず、人間の意識や実存と深く結びついたものとして理解しました。彼の思想において「時代」は、人間の精神的な状況や、世界に対する根本的な問い直しが生じる転換点として立ち現れます。

「軸心時代」とその意義

ヤスパースは、紀元前800年から紀元前200年にかけて、世界各地で同時多発的に生じた思想的転換を「軸心時代」と呼びました。この時期に、ギリシャ哲学、ヘブライズム、インド思想、中国思想といった、後世に多大な影響を与えた思想が誕生しました。彼は、軸心時代を境に、人間はそれまでの神話的思考から脱却し、理性に基づいた世界理解へと向かい始めたと主張します。

理性と実存の対立と相補性

ヤスパースは、人間存在を理解する上で、「理性」と「実存」という二つの側面を重視しました。「理性」は、客観的な知識や論理的思考を司る能力であり、科学や技術の発展に貢献してきました。一方、「実存」は、個々人が、有限な存在である自分自身と世界との関係の中で感じる不安や自由、責任といった実感を指します。

近代以降、科学技術が発展し、合理主義が隆盛する中で、人間は「実存」的な問いかけを置き去りにしてきた側面があります。ヤスパースは、このような状況を「時代からの逃走」と批判し、「実存」を軽視した理性は、人間を真の自由へと導くことができないと主張しました。

現代における「時代」の課題

グローバリゼーションや情報技術の進展など、現代社会はかつてないスピードで変化を続けています。このような時代において、私たちは、ヤスパースが「時代」や「実存」について考察した意味を改めて問い直す必要があるのではないでしょうか。科学技術の進歩がもたらす恩恵を享受しながらも、同時に、人間存在の根源的な問いに向き合い、「実存」的な感覚を取り戻すことが重要となるでしょう。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5