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ヤコブソンの言語学と詩学の構成

## ヤコブソンの言語学と詩学の構成

構成要素

ヤーコブソンの論文「言語学と詩学」は、大きく分けて以下の6つのセクションで構成されています。

1. 序論

 ヤーコブソンは、詩学の学問としての位置づけを明確にすることから論文を始めています。詩学(poetics)は文学研究(literary studies)の一部であり、文学研究は言語学(linguistics)の一部であると述べています。そして、詩学の対象は「文学性」―あるメッセージを文学作品たらしめるもの―であり、言語学における詩学の役割は、言語構造における文学性の位置付けを明らかにすることであると定義づけています。

2. 詩的言語と日常言語

 詩的言語と日常言語の対比を通して、ヤーコブソンは詩的言語の特徴を浮き彫りにします。感情を表現する言語機能は、詩的言語だけでなく日常言語にも見られます。しかし、詩的言語では、言語表現自体に焦点が当てられ、言語が自己言及的になる点が日常言語とは異なります。詩的言語では、音、リズム、意味などが相互に作用し合い、複雑なネットワークを形成します。

3. 六つのコミュニケーション機能と六つの構成要素

 ヤーコブソンは、あらゆる言語行為において、以下の六つのコミュニケーション機能と、それぞれに対応する六つの構成要素が存在すると主張します。

* **指示的機能(referential function)**:文脈(context)に焦点を当て、情報を伝達する機能。
* **美的機能/詩的機能(poetic function)**:メッセージ(message)自体に焦点を当て、言語の形式的な側面を強調する機能。
* **感情表出機能(emotive function)**:発信者(addresser)に焦点を当て、感情や態度を表現する機能。
* **読者関与機能/促動機能(conative function)**:受信者(addressee)に焦点を当て、行動や反応を促す機能。
* **交話機能(phatic function)**:接触(contact)の維持に焦点を当て、コミュニケーションのチャネルを確立・維持する機能。
* **メタ言語機能(metalingual function)**:コード(code)に焦点を当て、言語自体について言及する機能。

 これらの機能は、あらゆる言語行為に潜在的に存在しますが、特定の機能が他の機能よりも優勢になることで、コミュニケーションの目的や効果が変化します。詩的言語においては、美的機能が他の機能よりも優勢となり、言語形式に対する意識が高まります。

4. 等価性と詩的機能

 ヤーコブソンは、詩的言語の特徴として、言語の選択軸(axis of selection)における「等価性(equivalence)」の原理が、結合軸(axis of combination)に投影されることを指摘します。日常言語では、単語は主に意味に基づいて選択されますが、詩的言語では、音、リズム、意味などの類似性に基づいて単語が選択され、配置されます。この等価性の原理は、韻律、脚韻、頭韻、対句法など、様々な詩的技法の根底にあります。

5. 詩的言語の二つの軸

 ヤーコブソンは、詩的言語の分析には、選択軸と結合軸の両方を考慮することが不可欠であると主張します。選択軸は、類似した言語単位の中から特定の単位を選択することに焦点を当て、結合軸は、選択された単位を特定の順序で組み合わせることに焦点を当てます。詩的言語は、この二つの軸の相互作用によって、豊かな意味と効果を生み出します。

6. 詩学と言語学

 ヤーコブソンは、詩学が言語学の一分野として、言語の多様な機能と可能性を探求する上で重要な役割を果たすと結論づけています。詩的言語の分析を通して、私たちは、言語の創造的な力、そして言語が思考、感情、文化とどのように結びついているのかについての理解を深めることができます。

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