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ヤコブソンの言語学と詩学の感性

## ヤコブソンの言語学と詩学の感性

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言語の詩的機能

 ロマン・ヤーコブソンは、彼の著名な論文「言語学と詩学」の中で、人間の言語における六つの主要な機能を提唱しました。それらは、それぞれがコミュニケーションの異なる側面に焦点を当てています。 彼の主張の中核を成すのは、言語の「詩的機能」の概念であり、これは言語形式自体に注意を向ける機能です。 ヤーコブソンは、詩的機能はあらゆる言語活動に潜在的に存在すると主張しました。 日常会話においても、私たちは言葉遊びや比喩表現など、無意識のうちに言語の詩的機能に触れています。

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等価性と選択の軸

 ヤーコブソンは、言語の詩的機能を理解するために、「等価性の軸」と「選択の軸」という二つの重要な概念を導入しました。選択の軸は、話者が特定の文脈において、複数の選択肢の中から一つの単語や表現を選択することを指します。一方、等価性の軸は、選択された単語や表現が、音韻や意味において互いにどのように関連し、詩的な効果を生み出すかに焦点を当てています。

 例えば、「猫が座布団の上で丸まっている」という文において、「座布団」という言葉は「椅子」「ソファ」「床」など、他の選択肢の中から選択されています。これが選択の軸です。一方、「丸まっている」という言葉は、「猫」のイメージと音韻的に調和しており、擬態語的な効果も持ち合わせています。 このように、選択された単語が互いに響き合い、詩的な効果を生み出すのが等価性の軸です。

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詩とその他の言語活動

 ヤーコブソンは、詩とその他の言語活動を明確に区別しました。 彼によれば、詩は言語の詩的機能を最大限に活用し、言語形式自体を前景化します。 詩の中では、音韻、リズム、イメージ、比喩などが複雑に絡み合い、言語は単なるコミュニケーションの道具を超えて、それ自体が芸術作品となります。

 一方、その他の言語活動、例えば日常会話や新聞記事などは、主に情報を伝達することを目的としており、言語の詩的機能は背景に退いています。 もちろん、これらの活動においても、言語の詩的機能が全く存在しないわけではありません。 しかし、詩においては、言語の詩的機能が作品の中核を成し、読者に言語の美しさや豊かさを再認識させるのです。

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