モームの月と六ペンスを読む前に
ゴーギャンの生涯と作品について大まかに知る
モームの『月と六ペンス』は、フランスの後期印象派の画家、ポール・ゴーギャンの生涯を題材にした小説です。ゴーギャンは、株式仲買人としての成功を捨て、芸術の追求のためにタヒチへと移住しました。彼のこの劇的な転身と、西洋文明を拒絶して原始的な生き方を求めた生き様は、『月と六ペンス』の主人公チャールズ・ストリックランドのモデルとなっています。
小説はゴーギャンの伝記ではなく、ゴーギャンをモデルとした創作であることに留意することが重要です。モームはゴーギャンの生涯から着想を得て、独自の解釈を加え、ストリックランドという架空の人物を創造しています。
後期印象派の文脈を理解する
後期印象派は、19世紀後半にフランスで起こった芸術運動です。印象派の画家たちが光と色彩の瞬間的な効果を捉えようとしたのに対し、後期印象派の画家たちは、より象徴的な内容や感情を表現することに関心を持ちました。ゴーギャンもまた、後期印象派の画家の一人として、鮮やかな色彩と大胆な筆致を用い、原始的な文化や人間の内的世界を探求しました。
後期印象派の文脈を理解することは、『月と六ペンス』におけるストリックランドの芸術に対する姿勢や、彼の作品が周囲の人々に与える影響をより深く理解する助けとなるでしょう。
モームの独特な語り口に注意する
『月と六ペンス』は、ストリックランドの物語を、彼を知る「私」の視点から語られるという形式をとっています。この「私」は、客観的な観察者であると同時に、ストリックランドの才能と人間性に翻弄される一人間として描かれています。
モームは、皮肉とユーモアを交えながら、人間の欲望や虚栄、芸術と現実の対立といったテーマを深く掘り下げていきます。読者は、「私」の語りを通して、ストリックランドの謎めいた人物像や、彼を取り巻く人間関係、そして芸術の持つ力について、少しずつ理解を深めていくことになるでしょう。