## モームの月と六ペンスの表象
月
月は作中で、理想や芸術、精神的な充足などを象徴しています。特に、主人公ストリックランドが執拗に追い求める「美」は、月と重ねて描かれる場面が多く見られます。
* ストリックランドがタヒチ島で描いた、完成後焼き払われてしまった傑作の壁画は、月の光に照らされ神秘的な雰囲気をまとっていました。
* ストリックランドは、月の光の下で創作活動を行うことを好み、その光を浴びながら恍惚とした表情を見せる描写があります。
これらの描写から、月はストリックランドにとって、自身の芸術を触発し、高みへと導く存在として認識されていることが伺えます。
六ペンス
六ペンスは、現実や物質的な豊かさ、社会的な成功などを象徴しています。作中では、ストリックランドが捨て去ったもの、あるいは彼が全く関心を示さないものとして描かれます。
* 六ペンスは、物語冒頭でストリックランドが妻子に宛てた手紙に同封されていた金額であり、彼が家族を養う責任を放棄したことを示唆しています。
* ストリックランドは、絵の才能を見出されてからも、絵を売って金銭を得ることには全く関心を示さず、貧しい生活を送っています。
これらの描写から、六ペンスは、ストリックランドにとって、自身の芸術を追求する上で全く価値のないもの、むしろ邪魔になるものとして認識されていることが伺えます。