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モームの月と六ペンスの比喩表現

## モームの月と六ペンスの比喩表現

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月と六ペンス

まず、タイトルにもなっている「月と六ペンス」は、それ自体が作品全体を貫く大きな比喩表現です。月が象徴するのは、ストリックランドが生涯をかけて追い求めた芸術の高み、理想、そして絶対的な美です。一方、六ペンスは現実社会の象徴であり、生活、金銭、常識といった、月とは対照的な地上的な価値観を表しています。

ストリックランドは、月という崇高な理想に憑りつかれた結果、六ペンスで象徴される安定した生活や社会的な成功を捨て去ります。彼は、芸術という月の光に照らされて、それまでの価値観や人間関係をすべて捨て去り、ただひたすらに自分の内なる衝動に従って絵を描き続けます。

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蛾と炎

作中でストリックランドは、しばしば「炎に飛び込む蛾」に喩えられます。これは、彼が芸術という抗いがたい魅力に引き寄せられ、破滅的な結末を迎えることを暗示しています。蛾は、炎の熱によって身を滅ぼされることを知りながら、その光に抗うことができません。

同様に、ストリックランドもまた、芸術を追求することで社会的な立場や人間関係を失い、孤独な最期を迎えることになります。それでも彼は、まるで炎に飛び込む蛾のように、芸術という絶対的な美しさに抗うことができず、その魅力に身を投じていくのです。

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色彩の比喩

モームは、ストリックランドの絵画や、彼が訪れる場所などを描写する際に、色彩を効果的に用いて比喩表現を創り出しています。例えば、彼がタヒチ島で描いた絵画は、原色を基調とした強烈な色彩で表現され、彼の内面にある情熱や狂気、そして生命力などを象徴しています。

一方、彼がパリで過ごしていた頃の絵は、暗く重苦しい色彩で描かれており、彼の内面に渦巻く葛藤や苦悩を表現しています。このように、色彩の対比を用いることによって、ストリックランドの心の変化や、彼が目指す芸術の変化を表現している点が特徴です。

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