## モームの月と六ペンスと時間
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時間と芸術
「月と六ペンス」では、時間と芸術の関係が重要なテーマとして描かれています。主人公ストリックランドは、それまでの人生を捨てて絵画の世界に飛び込みます。彼は、残された時間と引き換えに、自分の内なる衝動、つまり芸術を追求することを選びます。
ストリックランドにとって、時間は有限であり、無駄にはできないものです。彼は、社会的な成功や物質的な豊かさには一切興味を示さず、ただひたすらに自分の内なるビジョンをキャンバスに表現することに没頭します。彼の絵画は、時間や社会の制約から解放された、純粋な創造性の表現と言えるでしょう。
一方、ストリックランドの才能を見出した画家のダーク・ストルーブは、時間をかけて評価を得ていくタイプの芸術家です。彼はストリックランドの天才を認めながらも、その生き方に戸惑いを隠せません。ストルーブにとって、芸術は時間をかけて熟成していくものであり、社会的な承認もまた重要な要素なのです。
このように、「月と六ペンス」は、時間に対する異なる価値観を対比させることで、芸術の本質、そして人生の意味を問いかけています。