## モームの月と六ペンスと人間
###
作品概要
「月と六ペンス」は、イギリスの作家サマセット・モームによって1919年に発表された長編小説です。この作品は、フランスの後期印象派の画家、ポール・ゴーギャンの生涯をモチーフに、物質的な豊かさや社会的な成功よりも、内なる芸術的衝動に突き動かされる人間の生き様を描いています。
###
登場人物とテーマ
主人公のチャールズ・ストリックランドは、ロンドンで証券仲買人として妻子とともに平凡ながらも安定した生活を送っていましたが、ある日突然、家族や仕事を捨てて絵画の世界に没頭します。彼は、芸術への飽くなき情熱と引き換えに、社会的な地位や倫理観、他者との関係など、従来の価値観を全て放棄していきます。
ストリックランドの才能を見出し、彼を献身的に支える画家のダーク・ストルーブは、ストリックランドの非情な仕打ちを受けながらも、その才能に敬意を抱き続けるという対照的な人物として描かれています。
###
「月と六ペンス」が示唆するもの
モームは、この作品を通して、社会通念や常識にとらわれない生き方、芸術の持つ力、そして人間存在の本質について問いかけています。ストリックランドの生き様は、周囲の人々に不幸をもたらす一方で、彼の遺した絵画は、後世の人々に感動を与えるという皮肉な結末を迎えます。
「月と六ペンス」というタイトルは、物語の中でストリックランドが語った言葉に由来しています。「六ペンス」は、当時のイギリスの通貨単位で、現実的で物質的な価値観を象徴しています。一方、「月」は、ストリックランドが生涯をかけて追い求めた芸術、理想、そして精神的な価値観を象徴しています。
###
解釈の多様性
「月と六ペンス」は、発表以来、多くの読者に愛読され、様々な解釈がなされてきました。ストリックランドの生き方は、自己中心的で残酷な一面を持つ一方で、純粋で妥協を許さない芸術家としての姿も持ち合わせています。読者は、それぞれの価値観や人生経験に基づいて、ストリックランドという人物を解釈し、作品から異なるメッセージを受け取ることになります。