モームの人間の絆の比喩表現
ペルシャ絨毯の模様
モームは、人間の様々な関係性をペルシャ絨毯の複雑な模様に喩えています。一つ一つの糸が、独立した人間の一生やその人生で起こる出来事を表しています。そして、それらの糸が織りなすことで、家族、友情、恋愛といった複雑な人間関係が浮かび上がってきます。
赤い糸
幾重にも重なる糸の中に、ひときわ鮮やかな赤い糸が見え隠れします。これは、主人公フィリップの人生に大きな影響を与える人物や出来事を象徴しています。時には愛する人との出会いを、時には人生の転機となるような出来事を、赤い糸は静かに、しかし力強く示唆しているのです。
絨毯の裏側
美しい模様の絨毯も、裏返せば糸が縺れ合い、一見すると無秩序に絡み合っています。これは、人間関係の複雑さ、表からは見えない葛藤や苦悩を表現しています。華やかな表面の裏に隠された、人間の弱さや醜さをも描き出すことで、モームは人間存在の真実を浮き彫りにしようと試みているのです。
未完の絨毯
人生は常に進行形で、完成することはありません。それは、ペルシャ絨毯が織り続けられる様子にも重なります。人生という名の絨毯は、新たな出会いや別れ、喜びや悲しみといった糸を織り込みながら、最後まで織り終えることのない、終わりのない旅路を象徴していると言えるでしょう。